ベートーヴェン / 交響曲第8番           

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 ベートーヴェンの交響曲も、他のはだいぶ前に取り上げたのですが、1番とこの8番だけがずっと放ったらかしになってました。それは何もこの曲に価値がないからではないのです。その良さが分かる人にとってはうんちくを語りたくなる要素があるようです。曲の構成や技法から見て独自なところがあるからです。ただ、一般的には、「舞踏の聖化」と呼ばれて近頃は第二楽章も映画音楽的に人気が出ている第7番(サラ・ブライトマンのせいかと思ったら漫画ドラマの方でした)と暮の「第九」の間に挟まれて、あまり注目されないというのが実際のところでしょう。大物演奏家の全曲演奏会で第8だけブラボー先生から見放されたこともあったぐらいです。ベートーヴェンの時代もそうだったようで、それを擁護するかのような発言が本人の口からも飛び出しています。作曲時期としては第7番と同じ頃、並行して行われたようで、リズム重視の作風も似ています。聞いてみると高揚した感覚になり、ある種絶頂感とでも言いましょうか、どこか頂上から見下ろしているような雰囲気も感じられます。

 ではなんでで今までなおざりにして来たのかというと、「この曲はこれが一番」という演奏がなかったからだ、と言ってみたいけれども、実際は聞いていて苦手な部分があったからです。7番のような静かな緩徐楽章が欠けているということも関係があります。それと、ティンパニで駄目押しされたリズムに繰り返しが多く、二つの音程の間を何度も行き来するくどさあります。裏を返せばそれが面白さなのですが、冗談のようでもあり、パパ・ハイドンの
わくわく顔の後期交響曲のようでもありま す。因みにハイドンの後期も、いくらか似た波長のあるモーツァルトのジュピターも苦手なのです。体調の良いときは乗れます。そうでないときは、力づくの演奏であれば耳を塞ぎます。


    weilbeethoven
      Beethoven Symphony No.8 in F major, op.93
      Bruno Weil    Tafelmusik Baroque Orchestra
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ベートーヴェン / 交響曲第8番 ヘ長調 op.93
ブルーノ・ヴァイル / ターフェルムジーク・バロック・オーケストラ
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 しかしとうとう決定打の演奏に出会いました。乗れるし、響きがきれいで心地良くすらあります。カナダのバロック・オーケストラ、ターフェルムジークの演奏です。指揮者はドイツ人のブルーノ・ヴァイル。今までにもインマゼールとのピアノ協奏曲や、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークなど、いくつか出ています。それにしてもこのベートーヴェンの交響曲、良かったので全集を買ってしまいました。楽団の方はブランデンブルク協奏曲の項ですでに取り上げていますが、バッハを聞かれる方にはお馴染みだと思います。 編成が小さくて音に透明度があります。バロック・ヴァイオリンの弦の音が繊細で瑞々しいです。でもそれだけなら他にもたくさん出てました。この演奏はリズムは軽快に切れますが、古楽器演奏の楽団にありがちな力みが抜けており、やたらと切れ過ぎたりません。尖っているのではなく、純粋に楽しいのです。スタッカートと音を続けて延ばすところとを分けており、つなげるところではしなやかにつなげます。その柔軟な動きが心地良く、途切れがちなリズムにならない新しい古楽演奏です。第8ってなんて楽しくて美しいのでしょうか。2016年の録音です。



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