「ひばり」と他の鳥たち
    ハイドンの四重奏、どれがいい?
 
   全集/ひばり/十字架上の七つの言葉/作品17, 20セット他


davidcoxskylark

 ハイドンは偉大な作曲家です。が、あまり聞かれないのかも知れません。「天地創造」の冒頭など、恐ろしく劇的で前衛的ですらあり、いつの時代の作曲なのか分からなくなります。交響曲の父と言われ、実際 にその形式を発明したのは彼ではないながら、104曲も作曲して事実上の創始者のようです。
 そして、弦楽四重奏という形式こそ、ほとんど彼に始まったようなものかもしれません。アレッサンドロ・スカルラッティが考えたと言われますが、実際によく聞かれるものとして「弦楽四重奏曲」と呼ばれ、古典派のソナタ形式も具えたものとしては、やはりハイドンが最初でしょう。仕えていた貴族のサロンではヴィオラの弾き手が余っており、それまで三人で楽しむのが習わしだったところを四人にしたという説もあったぐらいですから、それでいっても四重奏の発案者はハイドンということになります。

 でもあまり聞かれないのはどうしてなのでしょう。世間様のことはよく知りませんが、過去の自分の経験から言え ば、ハイドンというと親しみやすい、お貴族趣味で、ある種お調子の良い、いつも同じことを言ってる音楽という印 象を 抱いていました。四重奏で言えば73番の出だしなんか「たんたんたぬき」か「証城寺の狸囃子」かという鼻歌調に聞こえなくもありま せん。いや、正直なところ、そうしたことすらもイメージできず、ただ知ら ないでいた時期も長かったのです。もったいないことです。個人的なことついでに言えば、ハイドンの音楽を最初に 意識したのは神戸の街中の喫 茶店でした。旅行でふらった入ったのですが「ひばり」がかかっていて、モーツァルトの四重奏は聞いていたのにそ の曲は分からず、マスターに尋ねてみました。すると愛想良く「これね、意外なことに実はハイドンなんですよ。あ んまり聞かないけどいい曲でしょう?」と相手を思いやる気遣いをもって教えてくれました。以来、そのときジャ ケットを見せてもらったエオリアン四重奏団の演奏を愛聴してきました。懐かしい昔のことで、震災前でした。

 ハイドンの四重奏曲、68曲ほどあります。全部聞くのは大変。でも最近は箱もののCDセットを安く売る商売に なってきました。以前は何万もしてたのに、二十数枚セットの全集が昔のCD一枚分ぐらいで買えてしまいます。聴 き通す時間は相変わらず大変だけど、新しい発見もあります。だからまとめて買って後で悩むのも一 つです。よくよく全集を買うと聞かず仕舞いということがありますし、聞きたい盤だけ出しにくい欠点もあります。でもバラで数点買うと全集の値段を超えてし まうのでしゃくにさわります。
 では、どの全集を買うか。これが悩むところです。



ハイドン・弦楽四重奏曲全集(&選集)

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       Haydn   String Quartets
     Aeolian String Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲全集
エオリアン四重奏団
 まず、全集として最初に出たエオリアン四重奏団は外せません。自然な呼吸と勢いがあって、生きいきとしていま す。変わった解釈や想定外なテンポ設定はなくスタンダード ですが、堅苦しいところは全くなくて表情が豊かです。緩徐楽章や短調の運びでは深く瞑想的な息遣いも聞かれます。録音は1972年〜76年と古いですが、 アナログ録音が完 成された時期で、下手なデジタルより良いのではないでしょうか。もちろんちゃんとステレオですし、リマスターされていて音は全然大丈夫です。エマニュエ ル・ハーウィッツをリーダーとするイギリスの人たちで、歌い方一つをとっても音楽への愛情と深い理解を感じさせ る一流の四重奏団です。特にこのハイドンの演奏は大変有名です。もっと前からハイドンに取り組んでいて同時期に 録音が並行していたハンガリーの団体にタートライ四重奏団というのがあり、真面目な演奏で定評がありましたが、それ以外で は弦 楽四重奏の全集と言えば、まずこれが定番でしょ う。



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       Haydn   String Quartets
       Angelese String Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲全集
エンジェルス四重奏団
 アメリカの四重奏団です。このハイドンの演奏以外にCD を出しているのかどうか分からない団体ですが、ハイドン・ソサエティ(北アメリカとイギリスに それぞれあります)の支援を受けて(subsidized)フィリップスから出されたというもので、モダン楽器による演奏では大変魅力的です。エオリアン四重 奏団と比べると表情の大胆さと勢いの点ではややおっとりしているかも しれませんが、流れるようによく歌い、節度のある起伏があって滑らかな印象です。間とタメを大きく取って深刻かつ劇的に行くという方向性ではなく、さらっ として洗練されています。ピリオド奏法も取り入れているということですが、 確かにビブ ラートのかかる伝統的な奏法とは違うながら、テンポと強弱に現れる呼 吸は典型的なピリオド奏法というよりもモダンに近いナチュラルなものに聞こえます。テンポもスタンダードで、曲によってはややスピーディなものもある一方 で、全体的にはエオリアンより若干遅い部分が多いでしょうか。速い遅いというよりも、勢いに乗って弾き切るので はなく、流暢でもちゃんと一音ずつ丁寧に発音すると言った方がいいかもしれません。全集ですが、「十字架上の七 つの言葉」は入っていません。

 録音は1994年〜99年と新しく、さすがにその面ではエオリアンより良いところがあります。特にヴァイオリ ンの高い方の倍音が繊細に 延びていて、固まらない艶がありながら細やかで心地の良い音です。盤によって若干のばらつきがあるのは仕方のな いことですが、音色としては全集の中で一番きれいなのではない かと思います。定位が悪いという人もいますが、ほとんど気になりませんでした。ただ、 ちょうど「ひばり」が入っているあたりの録音が確かにスピーカのセン ターに音像が集まって聞こえるところがあり、モノーラルかと思って近づ いて行くと、両方のスピーカと自分とが正三角形になるあたりから左右の 音の違いが分かってくる、というようなことがありました。何のせいか不明ですが、プレーヤーによって若干印象は異なり、DAコンバー ターに位相切り替えがあるもので切り替えて試すとまた少し音像が変わ るということも経験しました(絶対位相なので理論上あり得ませんが)。 バイノーラル録音をスピーカーで聞いているような感じとでも言ったらよいで しょうか。その盤については反響成分も多く、エオリアンの方がいいかなと感じたことも事実です。ただ、ほとんどは大丈夫で、最も心地の良い弦の音色を聞か せるものの一つですので、鳴り方の評判であきらめるのはもったいないです。自分の考えでは全集の新定番ではない かと思っています。



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       Haydn   String Quartets
       Kodaly Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲全集
コダーイ四重奏団
 香港の廉価版レーベル、ナクソスから出ている全集です。廉価版にて候という目で見るべきでない、素晴らしい演 奏家を見つけてきて揃えているレーベルだと他のところでも言いましたが、この全集もそうです。ハンガリーはブダ ペストのクァ ルテットで、エオリアン四重奏団と並んでハイドンの全集の定番と言ってもよい出来だと思います。違いはエオリアン四重奏団よりも遊びが少ない感じがすると ころでしょうか。別の表現をすればわざとらしさが微塵もないとも言えます。大変真摯でオーソドックスな演奏だな という印象です。決して走ったりしませんし、表情が固いということではないですが、感情に流されないという意味 ではかっちりしていて安心感があります。内側からにじみ出す深みがあるとも言えますが、テンポを大胆に緩めて間 を取ることで深い情感を表すというものではありません。テンポはどちらかと言えば遅めな傾向はあるもの の、安定しています。個人的にはエオリアンかエンジェルスを取りたいですが、どれが好きかは全く個 人の趣味の問題だと思います。襟を正したまじめさが好きな人はコダーイでしょう。

 録音は1989年から2000年と新しく、エオリアンに対してはアドバンテージがあるかもしれません。音は倍 音 が細くならないいかにもモダン楽器的なもので、周波数にすると、良く出る低音は別として高域成分のうちの 3〜4KHz付 近の中高域がやや強めに感じられるもので、エンジェルスのハイの延びた繊細な方向とは反対の、演奏とも波長が似 た生真面目な音に感じます。レベルの高い録音で、中には高域の倍音成分まで比較的良く入っているセッションもあ りますが、私は古いエオリアンの音のバランスが悪いとも思わないので、どうしてもコダーイの新しい録音でなくて はという気にはなりません。これも個人の嗜好の問題だと言えるでしょう。



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       Haydn   String Quartets
       Buchberger Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲全集
ブッフベルガー四重奏団
 ピリオド楽器(古楽器)風のものはどうでしょうか。全集として完成しているのは今のところブッフベルガー四重 奏団ということになります。ブリリアント・レーベルから出ているもので、フランクフルトの人たちです。「風」というのは、ピッチを除いて、ちょっとピ リオド楽器の演奏のように聞こえるということなのです。オーケストラでもモダン楽器をノン・ビブラートで弾かせ る、いわゆる「ピリオド奏法」が流行ですから不思議はないでしょう。エンジェルス四重奏団も同じようなノン・ビブ ラートの指向性を持っていま すが、演奏はこちらのブッフベルガーの方が断然ピリオド奏法的です。適度にアクセントが付き、ディナーミク/アゴーギク(強弱/緩急)ともに動きがあり、 弓の運びにしたがって波が寄せては引きます。ただ、全部で はないですが速いパッセージで音符の区切りをはっきりさせず、案外さらさらと走るようなところがあり、悪く言ってしまうと上滑りで若干ラフな感じに聞こえ る瞬間もあります。他のピリオド奏法の団体と比べようにも、全集は他にないので比べられないわけですが。ピリオド楽器の雰囲気が好きな人にとっては この全集は良いと思います。

 2004年〜08年収録の音も良いです。高域が繊細に延びているところから、 古楽器の倍音とは違う滑らかさがあるにせよ、やや線は細く感じます。



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       Haydn   String Quartets
       Quartuor Mosaiques

ハイドン / 弦楽四重奏曲全集
モザイク四重奏団
 指揮者のアーノンクールが創設した古楽器オーケストラであるウィーン・コンツェントゥス・ムジクスのメンバー で構成されている四重奏団です。本格的なピリオド楽器(メンバーの誰かのネックの角度がモダン楽器のようだとい う意見もあります)による団体として1985年に結成されて以来、定評ある演奏を聞かせてきており、ハイドンだ けではなく、広いレパートリーを持っています。この選集は1989年から2002年にかけて録音されたもので す。古楽器によるハイドンの演奏の中では大変気に入っているので すが、残念ながら全集ではありません。10枚組(通常の全集なら21〜23枚ぐらい)で、「太陽四重奏曲」より 前の初期の作品が抜けています。初期なんか聞かないからいいというなら OK ですが、作品17は個人的には名曲揃いだと思ってますので、私としては残念です。

 インタビューによると、別に古楽器の団体だと思われたいわけではない的なことを言っており、演奏の中身に注目 して欲しそうなのですが、呼吸はピリオド奏法です。アーノンクールに指導を受けた専門の団体だけあって、弓の途 中で強くクレッシェンドする メッサ・ディ・ヴォーチェの息遣いが聞かれます。それが自分た ちの呼吸になっているので、不自然に感じさせません。そしてこの四重奏団の素晴らしいところは、大変彫りの深い表情を持っているところです。特に緩徐楽章 でのしっかりした間の取り方と感情のこもった強い音やデリケートなピアニ シモは、ときにまるでベー トーヴェンの作品を聞いているかのような手応えで、ハイドンの別の面というのか、本来の凄さというのか、とにか く新しい発見をしている気分になります。作品20で特にそのことを痛感し、作品17で素直に歌うところ が素晴らしかったエンジェルス四重奏団の演奏と比較しても、明らかにこのモザイク四重奏団のアプローチの方が曲 の魅力を引き出しているような気がします。評論家の吉田秀和氏は「各パートの動きがガラス張り的に分かるけれど も音楽的価値が増したわけではない」という趣旨のことを、巧みな比喩と微妙な言い回しで表現しています。古楽演奏というもの一般を論じた文であり、それ が当時賛否両論を巻き起こしていたという意味では、新しいものを肯定的に受け入れる度量もあったと言える発言だ と思います が、私の場合は各パートの独立性に目が行くというよりも、その表現の深みに簡明を 受けることになりました。



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       Haydn   String Quartets
       London Haydn Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲全集
ロンドン・ハイドン四重奏団
 名前の通り、イギリスの古楽器によるクァルテットで、「ハイドンへの情熱のために結成」とホームページでう たっています。モザイク四重奏団とは反対に、初期の作品から録音を進めており、作品9、17、20、33が現時 点でリリースされています。2007年に作品9、2012年に作品33を収録しています。ただ時代に沿ってとい うことかもしれませんが、「シュトルム・ウント・ドランク」期 と呼ばれる、ハイドンのひときわ「情熱」的な時代に焦点が当たっているような気がして注目したくなります。

 早速作品17と20を購入しましたが、演奏はこれもはっきりとしたピリオド奏法呼吸で進みます。そのうねるような独特の強弱の 付け方はモザイク四重奏団よりも大きく思えるほどです。しかし性急な感じは一切なく、息のつける穏やかさがあります。モザイクの方がエネルギーのこもったところがあ り、強いストレートさで来るところとゆっくり沈潜するところの差が大きくてやや劇的なように感じます。テンポは勢いの良い楽章で一部張り切っていると きもありますが、全体にはやや遅めでしょうか。かといって覇気のない演奏というのとは全然違い、モザイク四重奏 団のところで「ベー トーヴェンを聞いているような」と言いましたが、この楽団もかなり思い切った表情を見せるときがあり、聞き応え があります。リラックスできるところが前面に出ていながらも、エンジェルス四重奏団のスマートな流麗さとは 異なり、ときに先鋭さも隠し持ちつつゆったりアップダウンのある心地良さです。質の違うものに上下を付けることは不可能です が、録音が進んで 行ってモザイク四重奏団とかぶって来たときに、果たしてどちらが良い出来だと感じられるのか、 楽しみな気もします。モザイクが録音してくれなかった作品17があって、大変ありがたいです。

 音はセッションによって若干違うところがあるようで、強調して言うならば、作品17では高域がはっきりしてお り、輝かしい艶に加えて時折鋭さも感じさせる録音です。一方で作品20の方は繊細に高域が延びているもののキツ さは全くなく、大変優れたバランスです。



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       Haydn   String Quartets
       Quatuor Festetics

ハイドン / 弦楽四重奏曲全集
フェステティチ四重奏団
 コダーイ四重奏団と同じくブダペストの楽団ですが、古楽器で演奏します。CDは作品9〜ラストまでの録音で、ア ルカナ・レーベルから出ています。同じ団体で他レーベルにもいくつか散発的に別録音があるようで、詳しい方が そっちの方が良い旨発言されてますが、他のは聞いていないのでどういうものだかは分かりません。
 古楽器好きとしてはこのセットも外せないわけですが、しかしこれはちょっとイメージが違うかもしれません。ま ず録音 ですが、バ ロック・ヴァイオリンは繊細な高域の倍音が良いところだと思います。しかしここでの音はそのようにハイの延びた ものではなく、中高域の張ったわりとキツい音に聞こえます。モダン楽器かと思うような音です。残響もほとんどな く、やわらかくて潤いのある弦の音 が好きな人には意外に感じられるだろうと思います。その音のせいで印象が引きずられるのかもしれませんが、演奏 も野太いところのある、やや押しの強いものに聞こえます。エネルギッシュと言えば良い評価になるでしょうか。個 人的にはあまり好みの方向ではないので、好きな人にお願いすることにしてあまりコメントしないでおきます。 1989年〜2005年にかけて録音されたものです。



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       Haydn   String Quartets
       Kuijken String Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲全集
クイケン四重奏団
 後期のみの録音です。第2アポーディ四重奏曲から絶筆までの全作品と、「十字架上の七つの言葉」の合計5枚がリリースされています。「騎士」「五度」「皇 帝」「日の出」「ラルゴ」などが含まれます。「ひばり」は含まれませんが、ハイドンの弦楽四重奏は後期の表題付 きの有名ものだけでいいという人には最適でしょう。演奏はピリオド楽器と奏法で、クイケンにはクイケン独自の歌 があるのでしょう。情熱的にえぐるようなところは ないですが、ゆったり落ち着いた自然体で大変心地良いものです。いわゆる「疾風怒濤」の時代の作品ではないのでこれが最 適かもしれません。1994年〜2002年にかけての録音も秀逸です。



どの曲がどう?

 さて、全集を手に入れて何度も立ち向かい、ソファで睡魔と格闘したこともある ハイドンの68連発、気に入った曲はメモにいっぱい記号を書き込みました。誰でもそうだと思い ますが、自分の耳で聞いてみると、必ずしも評判通りのものが良いとは限らないということになり、何らかの新しい発見があるものだと思います。それぞれの好 みですから正解はありません。とは言うものの私はずいぶんと落 第生らしく、あまり一般的でないものばかりが気に入り ました。もちろん「独自の審美眼だ」などと自慢したいわけではありません。そうした中でも印象的だったものについて、以下に少しだけ書きま す。

 第57番、作品54の第二楽章、皆さんどう思われるでしょう? モーツァルトの有名なハイド ン・セットの中の弦楽四重奏曲、「不協和音」の序奏に似てないでしょうか。特に最初の部分では なく、中ほどからですが。「不協和音」は第19番で、当のハイドン自身に捧げたセットの中の最 後の曲ですが、出だしの短い部分に当時としては異例な構成の和音が出て来るのでそう呼ばれてい ます。現代の我々の耳にはすごい不協和音というわけではないですが、それでも異例だったのは十分わかるズレた心地良さがあります。長くため息のように引きずる上声部が不協和音になるわけです が、伴奏が短い音形で同じ音を点線のように奏でる上に長く引きずられます。ハイドンの方もやは り同じような伴奏の音形の上に長音符の旋律が展開します。モーツァルトのほど不協和音ではあり ませんが、若干そんな感じのする音も混じります。何度聴いても類似性を感じるのですが。
 モーツァルトがハイドン・セットの四重奏を書いたのは1782年から85年までで、二年ほど かけています。お手本にしたのはハイドンの「ロシア四重奏曲」と呼ばれる作品33のセットだっ たと言われます。でもこれだけ似ているのだから、作品33じゃなくて、54の方だったんじゃな い? と思い、調べてみました。すると、なんということでしょう、ハイドンの作品54の「不協 和音」に似てる曲集、「第1トスト四重奏曲」の6曲はどれも1788年頃の作曲ということに なっています。モーツァルトのハイドン・セットの後なのです! モーツァルトは自作の楽譜に 「わが最愛の友」と書いてハイドンにその曲たちを献呈しました。そして1785年の初めにハイ ドンを自宅に招き、披露したのです。するとハイドンは大変驚いて、たまたまやって来ていて同席 していたモーツァルトの父、レオポルドに「あなたの息子さんはすべての作曲家の中で最も偉大 だ」と激賞しました。果たして、反対にハイドンの方が仲の良かった24歳年下のモーツァルトか ら影響を受けたということもあるのでしょうか。

 作品54の「第1トスト四重奏曲」のセットはなかなかきれ いな曲が揃っているように思います。上記の第二楽章もですし、次の第 58番 op.54ー2の第二楽章も短調で、分厚い低音に支えられたところはブラームスか何かのようで、ときどきポリフォニックな泣きの装飾が入らなけ ればロマン派の作品かと思うような哀切なメロディーです。ユニゾンを多用した第三 楽章の展開部もいいですし、ゆったりした中で淡々と訴える終楽章も途中から短調の影が差しつつ転調し、手の込ん だ構成で聞きごたえがあります。第59番 op.54ー3の古典派らしい優美な第二楽章もきれいで、途中から様々に展開し、色々な表情を見せてくれて飽きさせません。  

 作品33の「ロシア 四重奏曲」のセットの5曲目、第41番の第二楽章、短調のどこか聞き覚えのあるようなメロディーで始まり、そして少し間をおいて第一ヴァイオリンが断定す るように奏で、それから同じ節を残りの三人がユニゾンで応えるところは大変印象的です。途中から夢見る ような長調になりますが、それがまた短調になると煮詰まって大変鋭い、熱い感情のこみ上げとなってきま す。そして最後はまた断定的な第一ヴァイオリンと残り三人がユニゾンで掛け合う印象的な会話となり、ピ ツィカートで終わります。このカンタービレの楽章はハイドンの才能が爆発している傑作ではないでしょう か。
 同じく作品33の第6番(第42番)、これも短調の第二楽章は、息の長い第一ヴァイオリンの持続音の 中で展開して行くのが大変印象的な楽章です。ゆっくりですが大変テンションの高い音楽です。ここもやは り途中で転調しますがまた短調に戻り、やがて通奏低音部のようなチェロの持続音の上でヴァイオリンがソ ロで、ヴィヴァルディの協奏曲の短調の緩徐楽章のような鮮やかなパッセージを歌い上げて終わります。 

 こうして見て行くと、やはりどうも緩徐楽章ばかりに目が行っているようです。ほとんどが第二楽章、た まに第三楽章がゆっくりな場合もありますし、まれには勢いの良い曲の部分でうならされることもあります が。元来静かな曲好きではあるわけですが、それにしてもハイドンの四重奏については特にそれが言え るようです。こういう意見も聞いたことはあるので少数派ではないと思うのですが、皆さんはいかがでしょ うか。


 第二楽章で良かったのは他にもたくさんあります。例えば、後ろから 前へ行くならば、作品71は 「第1アポーニー四重奏曲」ですが、その1番(第69番) の第二楽章、3番(第71番)の第二楽章、それから作品64は 「ひばり」の入っているセットで「第3トスト四重奏曲」と 呼ばれますが、その2曲目(第64番)の第二楽章、3曲目(65番)の第二楽章、作品55は 「第2トスト四重奏曲」で、その3番(第62番)作品42は単 独の曲でセットになっていませんが、変則的に第三楽章が 緩徐楽章です。これも親しみやすいメロディーです。マーラーもそうですが、第二楽章シリーズをプレイリ ストに作って部屋に流しておいたら幸せになれそうです。こんなことを言うとサンドイッチから嫌いな野菜 を抜き出している悪い子のようで、ハイドン愛好家の人に叱られそうですが。
        
 

弦楽四重奏曲第67番「ひばり」op.64             

 68曲もあって、でもやっぱり一番好きなのは「ひばり」かもしれません。68曲中 の第67番だから最後から二つ目ということではありません。誰でも知ってるセレナーデを含む第13番から18番まではハイドン作と思われていたものの、と ある修道士作だと分かって除かれたのでハイドンの四重奏は83番まであるのです。「ひばり」は 第3トスト四重奏曲というセットに入っています。作曲されたのは1790年、モーツァルトと今 生の別れをした年でしょうか。この曲が好きな理由は 自分の思い出もありますが、優美で親しみやすい個性的なメロディーが第一楽章から満載だからです。というの も、ハイドンはだいたい第二楽章がきれいなので、最初から得した気分なのです。波長は楽しげ で、やさしいです。ベートーヴェンの田園に勝るとも劣らない抗うつ剤です。そして、よく展開し ます。というのも、他の曲では同じようなフレーズをいつまでも歌ってる鼻歌パパみたいな調子の もままあるからです。作曲家でないからよく分かりませんが、構成は見事だし、最高傑作です。



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       Haydn   String Quartet No.67 Skylark
       Aeolian String Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲第67番「ひばり」
エオリアン四重奏団
 演奏ですが、前述のエオリアン四重奏団は今でも素晴らしいです。よく抑揚がついて自由さを感じさせ ます。この楽団は弾き方が荒っぽいという人がいますが、私にはそんな風には聞こえませ ん。元気なところはあるかもしれませんが。初めてハイドンの弦楽四重奏曲全集を出した記念碑的 演奏です。今はリマスターもされ、価格も昔の十分の一ぐらいかもしれません。バラだと有名な 「皇帝」、「日の出」とカップリングになったのも一枚で買えます。ひばりは1975年の録音です。



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       Haydn   String Quartet No.67 Skylark
       Hagen Quartett

ハイドン / 弦楽四重奏曲第67番「ひばり」
ハーゲン四重奏団
 1981年に結成されたザルツブルクの兄弟たちの クァルテット、ハーゲン四重奏団のひばりは 後から知りました。全く見事な演奏です。この人たちはいつもそうですが、細部にまで絶妙な表情がつ いて、自然によく歌います。弾むような軽さも持ち味です。ひばりの運びはどこにも文句がつけられない生 きいきしたもので、録音も大変すぐれています。今のところ単独ベストでしょうか。「騎士」と第1番の カップリングで1988年の録音です。



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      Haydn   String Quartet No.67 Skylark
      Quatuor Mosaiques

ハイドン / 弦楽四重奏曲第67番「ひばり」
モザイク四重奏団
 クイケン四重奏団が弾いてくれてない こともあり、ピリオド楽器でとなるとモザイク四重奏団のもので しょうか。ピリオド奏法独特のディナーミクが心地良く聞こえるか余分に感じるか は人によると思います。曲への先入観や、聞き慣れてきたものを良く感じる心理というものもあ るでしょう。個人的にはひばりは軽やかな方がいいので、案外モダンなアプローチで 満足してしまいますが、ここでのモザイク四重奏団の演奏はテンポこそ若干遅めのパートがあるものの、曲の調子に合わせていつも より軽めのアプローチを取っているような気もします。ピリオド奏法だから起伏が大き過ぎて気になるとい うことはありません。ハーゲン四重奏団の弾むような軽快さと違うところがあるとすれば、力を抜いて行くところでスラーでつなげ気味にするところでしょうか。 重さに感じるとは言わないものの引きずるように感じられ、軽快さとは違う方向です。しかし全体には表情 があって素晴らしい演奏だと思います。

 いくらか問題があるとすれば録音でしょうか。他のセッションではあまり気になりませんでしたが、この ひばりについては中域に反響があります。箱鳴り気味で若干もやがかかったように聞こえ るのです。エンジェルス四重奏団もひばりは反響があったので、どういう偶然の一致か、ひばりは運のない ことです。また、選集とダブって買ってしまいましたが、カヴァーイラストが乙女チックなのでいいことに しましょう。短調の64番と66番がセットになっています。2001年収録です。



十字架上の七つの言葉 op.51

 シュッツと並んで有名な曲です。ハイドンの方はスペインの教会からの依頼で1787年に作 曲されました。第50番にあたるこの曲はソナタ形式 の四楽章構成ではないので、いわゆる「弦楽四重奏」とは違うか もしれませんが、短調を基本とし、最後の地震(キリストが死んだとき地震が起きたという聖書の記述を元にしている)を除いてゆっくりした曲ばかりで構成さ れ、いつも上機嫌なハイドンの作品の中では異彩を放った厳粛な世界を見せてくれます。 もちろんそこはハイドンのこと、深刻過ぎず穏やかで心地良いのですが、宗教曲好 きの人にはこの波長は逃せないのではないでしょうか。

 最後の地震は、「これが地震?」 という曲な気がして仕方がありませんが、内陸オーストリアのハイドンは地面が揺れるな んて知らんのだろうと思って調べると、そこそこ起きてるんですね。彼のいた現在のハン ガリーでも同様です。古典派の地震ってこんな感じなんでしょうけど、とりあえず疑って ごめんなさい。

 聖書にはキリストが十字架に 磔になった後で発した七つの言葉がありますが、教会ではそれを朗読し、その後黙想するということが行われたようです。この曲はそのための音 楽として作られました。結構苦労したようですが人気の曲となりました。ハイドン自身も出来に満足してい たようです。 元は管弦楽曲として作られたのですが、オラトリオと弦楽四重奏曲にも編曲されました。
 キリストの七つの言葉とは以下のものです:

1. 十字架につけようとする者たちに対して
「父よ、彼らをお許しください。何をしているのか分かっていないので す」
 
2. 一緒に磔になった罪人に対して
「あなたに言います。今日、あなたは私とともに楽園にいるのです」

3. 自分が死んだ後の母マリアのことを案じ、弟子ヨハネに暗に母の面倒を見てもらおうとして 
「そこにあなたの子がいます。そこにはあなたの母がいます」

4. 次は解釈の難しい部分ですが、千年ほど前にダビデが来るべきメシア(救世主=キリスト)について予言的に言ったと解釈される詩編の言葉を繰り返していると 考えられています。つまり、自分が人類の罪を背負って罪人として死ぬメシアその人であることを宣言して いるとされる言葉です。
「わが神、わが神、なぜ私をお見捨てになったのですか」

5. これも聖書の詩編でキリストについて予言されたことが成就されるために言われたことだとされます。これを単純に喉が渇いたという意味にとらえた兵士は葡萄 酒を持ってきました。
「渇く」

6. 予言された通り、人類を救うために購いの死を遂げるというキリストの役目が終えられたことについて
「すべて成し遂げられた」

7. 息を引き取る直前に
「父よ、わが霊をあなたの手にまかせます」



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       Haydn   The Seven Last Words of Christ (string quartet version)
       Kuijken String Quartet

ハイドン / 十字架上の七つの言葉(弦楽四重奏盤)
クイケン四重奏団
 ピリオド楽器による演奏では、このクイケン盤とモザイク四重奏団で しょうか。クイケン兄弟たちの後期四重奏曲はバラ売りですが、この有名な「十字 架上の七つの言葉」も 同じメンバーで入れています。過度に劇的にはやっていませんが、そのゆったりと した距離の取り 方が黙想的な曲の成り立ちに相応しいものとなっています。平穏で、急ぐことなく一歩一 歩進んで行くような運び方から静けさを感じ取れます。モザイクよりも感情移入が少ないあっさりしたとこ ろが人によって美点とも欠点ともなり得る演奏だと思います。個人的には、甲乙付け難いです。1994年 の 録音はやや 細身なヴァイオリンの音をよく捉えていながら決してギスギスした方に傾かず、良い音です。



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       Haydn   The Seven Last Words of Christ (string quartet version)
       Quatuor Mosaiques

ハイドン / 十字架上の七つの言葉(弦楽四重奏盤)
モザイク四重奏団
 クイケン四重奏団よりもやや感情表現に重きが置かれているように聞こえます。出だしから若干引きずるようなス ラーが施され、間も多く取ります。拍を一瞬遅らすようなアクセントやフレーズごとのリタルダンドも聞かれます。 決してオーバーなことはありません。精妙によく歌っている感じで、演奏の個性という点では明らかにクイケン兄弟 たちの盤よりもこの人たち独自の仕事をしているという感じです。クイケン盤では一音一音区切るようなフレージン グが印象的でしたが、呼吸があり、滑らかに上下する伸び縮みの心地良さではモザイク盤でしょう。自分の中にある 歌の出し方が違うのだと思います。
 テンポは最初の助奏を聞いた段階では表情のある分クイケン盤よりも遅いのかと思わせ、実際にいくらか遅いので すが、それ以降では逆転してクイケンの方が遅く、トータルではモザイク四重奏団の方が9分近くクイケン盤よりも 速いことになります。あまり速いという印象もないのですが。

 録音はピリオド楽器特有の線の細さがあまり感じられず、しかし繊細に高域の倍音成分まで入っています。なんか バロック・ヴァイオリンとモダン・ヴァイオリンの中間のような艶の乗り方に聞こえます。うっとりする大変良い音 です。いかにもピリオド楽器的なのはクイケン盤の録音ですが、これはこれでむしろ気持ちよく感じます。1992 年の録音です。



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       Haydn   The Seven Last Words of Christ (original orchestra version)
       Frans Bruggen   Orchestra of the Eighteenth Century

ハイドン / 十字架上の七つの言葉(オリジナル管弦楽曲版)
フランス・ブリュッヘン / 18世紀オーケストラ
 弦楽四重奏ではなく、オーケストラ版というのはどうでしょうか。弦楽四重奏版は元々はこの形だったものをハイドンが編曲したものです。他にもイエスの言葉を歌う部分のあるオラトリオ版があります。弦楽四重奏と違う点は管楽器が入ることによってストイックさが減ること、編成が大きくなって低音が厚くなり、包まれるように心地よく響くことでしょうか。最後の地震はさすが に迫力があり、元来がこういう編成で作曲されたのだということを納得できます。瞑想の後、残響の多い教会でこん な音を聞いたらさぞかし印象的だったでしょう。 

 近頃のブリュッヘンらしくゆったりと肩に力の入らない演奏です。それがこの瞑想の曲に相応しいものとなってい る気がします。切々と、あるいは鋭さと迫力をもって、というのとは違いますが、本来の宗教的意図としてはこれこ そがあるべき姿でしょう。
 面白いのはイエスの言葉を朗読する代わりに、曲の間に非常に短い音のフレーズが奏でられることです。それはブ リュッヘンがロン・フォードという現代オランダの作曲家に作曲依頼して挿入したもので、当時の基準からすれば不 協和音に当たるようなコードをもって鳴らされます。ぴったりだと納得するかどうかは人それぞれの感性でしょう が、付け足されたものなので各楽章の演奏そのものはハイドンの書いたままです。独特のぴりっとした空気感を醸しつつどこか夢の 中にいるような感覚を味わわせてくれます。

 レーベルはスペインのグロッサで、録音がややオフに感じられるセッションもある中で、この音は大変バランスが 良いと思います。きらびやかさはありませんが、自然で繊細な古楽器の弦の音が心地良いです。2004年のオラン ダでのライブを編集したもののようです。優秀録音だと思います。



エルデーディ・セット op.76         

 さて、ハイドンの有名な四重奏曲は、「ひばり」などの数曲を除けばほとんどが 円熟期の1797年作曲「エルデーディ四重奏曲」のセットに入っているものだと思います。ハイドン65歳の頃の作品です。セッ トというのは、慣習として6曲ほどが組にされて作曲されたからです。このセットには第76 番「五度」、77番「皇帝」、78番「日の出」、79番「ラルゴ」などが含まれます。「日の 出」の出だしはなかなか心地良いですし、第二楽章も静かでいいです。第80番の第二楽章もきれいですし、そして「ラ ルゴ」のラルゴたる第二楽章は評判通り大変美しい曲です。 この曲集の中では個人的に最もいいかなと思っています。

 そして最も有名なのは「皇帝」の第二楽章でしょうか。これは現在のドイツ国歌のメロディーと なっています。誰しも耳にしているでしょうし、国歌としてどこかの競技場で聞いたりするといか にもですが、四重奏として聞くと大変きれいです。イギリスに出かけたハイドンがイギリス国歌で 人々が愛国心を高揚させるのを見て、ナポレオンにやられていた母国オーストリアでも国歌を作ろ うと言い出し、自分で作曲しました。ハイドンのときではなかったですが、後のオーストリア=ハ ンガリー帝国の時代には実際に国歌になりました。それがそのままドイツの国歌としても採用され ましたが、ちなみに歌詞は後に別の人が作ったもので、1番から3番まであります(その後4番も作られました)。しかしナチの時代には1番のみが国歌とされ たこともあり、現在1番を人前で歌ったり するとネオナチだと思われるそうです。今の国歌は3番のみです。
 


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       Haydn   String Quartet op.76 Erdödy
       Kuijken String Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲集 op.76 エルデーディ・セット
クイケン四重奏団
 全集(&選集)の項ですでに述べましたが、これらエルデーディ・セットの四重奏曲集は、その前の第2 アポーニー四重奏曲三曲、その次のロブコヴィッツ四 重奏曲二曲と、ハイド ンの絶筆となった二楽章だけの四重奏曲、第83番も含めて、クイケン四重奏団が日本の DENON レー ベル か ら出しており、ピリオド楽器の音で楽しむことができます。もとより素直で落ち着いた歌い回しが 良かった人たちですから、モーツァルトのセット同様ここでもおっとりとした力まない表現で聞か せてくれます。録音も DENON はときに細くメタリックに傾きがちなところがあったり、反対にオフになったりすることがあったりするものの、ここではそうならず、繊細でナチュラルな優秀 録音です。 日付は95〜96年で、録音エンジニアは海外の人のようです。



太陽四重奏曲セット op.20

 もう少し、時計の針を前の方へと戻してみましょう。ハイドンは果たして、晩年が良かったのでしょうか。彼の円 熟期はいつなのでしょう。年とともに美しく磨かれた作曲家は、異論はあるかもしれませんがモーツァルトもベー トーヴェンもそういうところがあると思います。しかしポリフォニーの職人であるバッハは必ずしも晩年でな くても深みのある曲をたくさん作っています。歴史上での集合的な意味で言う自我が拡大し、自分の感情を表 に出すようになった作風のものほど、その作曲家個人の人生経験を反映するのかもしれません。時とともに酸いも甘いも噛み分けて、あきらめもついてき た頃の方が味のある作品を生み出す傾向があるような気がするのです。同時に作曲家個人が生涯で作る曲も減って 来た。一方で形式性の強いものと、神の世界からインスピ レーションを降ろしているような印象が強い作品は年齢に関係ないところがある。つまり自分のアイディアを自らの 力で語るものほど円熟が必要とされるというわけです。しかしそうなると、インスピ レーション型のモーツァルトが晩 年が良いという事実にはまた別の理由がなければなりません。ではハイドンは? 

 よく言われるのは、「シュトルム・ウント・ドランク」期の作品には味がある、というものです。「疾風怒濤」期 と訳されますが、文学で言うところのムーブメントであって、音楽は本来関係ないのです。そこにはゲーテなどが含 まれますが、基準になる作品があるようで、学者の説では1767年から1785年にしようということになってる らしいです。ドイツの文学運動であり、それまでの理性と思考の普遍性をうたった啓蒙主義に対し、より個人の主観 的な感情を強調する方向に振り子が振れたもののことを指します。その後同じような意味をもって古典主義と対立す る(ドイツ)ロマン主義の運動へとつながり、今度は音楽も巻き込んで19世紀終わりまで行くわけですが、ハイド ンの生きていた時代はちょうど、この最初の疾風怒濤の時代でした。しかも彼の作風の上で、ある時期がより感情表 出が強いように思えることから、「ハイドンのシュトルム・ウント・ドランク期」という風に括弧付けされ、その場 合に限っては1766年から73年頃までがそれに該当するのではないか、と言われるのです。年齢では77まで生 きたうちの34から41歳頃までです。晩年でない時期に主観性を強調する作品が書かれ、それらに味があるという 主張は面白いと思います。

 弦楽四重奏で言うと、作品9、17、20がそれに当たります。これはまったくもって個人的感想なのですが、 四重奏に限って言えば、op.9までは個性においてそれ以降の作品より色濃いものではなく、準備期とまでは言わ ないもののあまり印象に残りません。感情が目立つ疾風怒濤期のものとして相応しいのは残りの op.17と20であるような気がします。そして、ハイドンの全弦楽四重奏曲のうちで最も印象に残ったのは、単発的ないくつかを除いてこの二つの曲集でし た。これ以降の作品は、技巧的には進展著しいのかもしれませんが、貴族のサロン趣味のような繰り返しが多かった りして、過激なものは受け入れられない聴衆 への配慮があったのではないかという気もします。迎合というと言葉 が悪いですが、社会からドロップアウトして十 年もの間街の流しなどをして生きてきた苦労人のハイドンは、絶妙のバランス感覚を持っていたのかもしれません。 それとも若きウェルテルの悩みを過ぎ、幸せ太りしたのでしょうか。

 作 品20はハイドン40歳頃の作品です。弦楽四重奏というジャンルを完成したとも言われるベートーヴェンの、その中で も後期の偉大な作品を思い起こさせる瞬間があるように思います。有名なあれらの作品のルーツは、実はハイドンに あったのだと再認識させられるのです。
 作 品20を高く評価する声は元々あるようです。技法的な意味で、各楽器の対等性が上がって四重奏としての体裁が確 立されたのはこの作品以降だ、というような観点からだと思います。しかし例によって私は学者的興味は持ち合わせ ていないので、この曲集のうち、ゆったりした楽章ばか りが好きです。その緩徐楽章では驚くような感情と大胆な試みを感じます。前述したように後期の作品の中にも実験 精神旺盛な尖ったものはありますから、作品20だけがそうだとは思いませんが、この曲集に集中してうならされる 楽章が含まれているのは事実です。形式に関係しつつも「心に響く」という意味で。作品17よりも、その孤高は極 まっているいるのではないかという気もします。いくつかを具体的に記し てみます:

1番(第31番)の第三楽章(1ー3):
 持続的で息の長いメロディーラインが印象的です。静かな期待に少し憧れの混じったような感覚を覚え、途中で薄 い雲がかかったりして、満ち足りて終わります。

2ー2: オクターブの移動ではないながらユニゾンで入るところがモーツァルトのハフナー 交響曲の出だしを短調にしたような節に聞こえます。しかし響きはベートーヴェンを思わせる、思い切った動きの劇 的な短調です。静かで簡明なユニゾン(ハイドンの特徴)がベー トーヴェンでも後期の四重奏を思わせるところがあり、一瞬作品131や135のどこかに迷い込んだように感じます。それに加えてハイドン自身の作品で言え ば「十字架上の七つの言葉」を彷彿とさせる断片も聞かれます。

3ー3: アダージョの祈るような楽章で、これもベートーヴェンで言うならば15番(作品132)の第三楽章の 感謝の歌のようでもあります。もう少し牧歌的とも言えるかもしれませんが、思わず聞き惚れます。

4ー2: 短調のアダージョで、時々諦観も含まれるけれども哀切な感じです。ハイドンがこういう曲を書くのか と、思わず真顔になって集中してしまいます。

5ー1: 切々とした短調で始まり、 明るく変化し、また短調に戻って締めくくられる10分ほどの力作です。

5ー3: ゆっくりした三拍子で、ワルツのようです。踊りのステップを踏んでいるの か、一歩ずつ歩いているのか分かりませんが、大変親しみの湧く節で語りかけるように進行します。落ち着いた叙情 というか、どこか懐かしいような、ハイドンのメロディの最良のものが聞かれます。 

5ー4: フーガです。こういう構成があるのですね。バッハの音楽の捧げもののようなポリフォニーで、ベートー ヴェンもフーガに挑んだことを思い出します。厳密な定義は聞かないでください。でもベートーヴェンが最初ではな かったのです。

6ー2: 古典派の節回しながら、時々瞬間的にヴィヴァルディを思わせるような軽やかな運びがあります。そこか らスラーでつながったよく歌う長いメロディへと進みます。これも魅力的な楽章です。
 


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      Haydn   String Quartets op.20 "Sun" Qurtets
      Hagen Quartett

ハイドン / 弦楽四重奏曲集 op.20「太陽」
ハーゲン四重奏団
 弾力のあるリズムながら大変軽やか で、モダン楽器による演奏だからか、ピリオド楽器ないしピリオド奏法を志す四重奏団よりもテンポが速めなところ があります。モダン楽器のグループと比較してもエンジェルス四重奏団などよりはだいたい速めで、抑揚は自在で繊 細に付いているけれども過剰な重さがありません。天使の羽とでも言うべきか、これと比べるとモザイク四重奏団もじっくり構えた 重さを感じるほどです。愉悦を感じる側に軸足があり、感情を込めて作品の持つ荘重さを浮き彫りにしようという意 図はないのかもしれません。一方で緩徐楽章でのテンポはモザイク四重奏団と変わらぬほどゆったり歌うところがあ り、ボーイングで古楽器のうねるような強弱がつかないところはモダンであっさりしてはいるものの、かえって真っ すぐに訴えて来ます。4番(34番)の第二楽章など、短調で切々 と歌う様が鮮やかです。ピリオド奏法の演奏は大変気に入っていますが、それとは違う方向で同じぐらい魅力的で す。技術的にも大変レベルが高いのでしょう、スマートで楽しげで、軽々とこなす感じです。

 この四重奏団、第一ヴァイオリンの歌わせ方が気が利いていて独特のセンスがあり、兄弟たちということでそれを 全員が共有していていつも大変良いと思うのですが、人によってはディナーミクが過剰だと感じる場合もあるようで す。確かにベートーヴェンの一部とモーツァルトについては大変思い切った表情を見せることがあり、特にザルツブ ルクの彼らがモーツァルトに対して見せるアプローチは、この作曲家に対しての特別な思いがあるのか、形は違うけ れども一頃のピリオド楽器による演奏が独特の強いアクセントを持っていたのと同じぐらいインパクトがあります。 もっと後の時代の作曲家に聞こえたりもするわけで、グラモフォンからレーベルを変えた後のものはそれが特に顕著 であり、一般的なモーツァルトの演奏と違うので戸惑うわけです。しかしそれ以外の演奏、例えばこのハイドンや シューベルト、ドヴォルザーク、ラヴェルなどは一体となった有機体のようで大変心に響きます。間違いなく世界一のクァル テットの一つではないでしょうか。にもかかわらず、何のせいだかこのハーゲン四重奏団、同じオーストリアのアル バン・ベルク四重奏団よりは人気がないようで、多くのCDが廃盤になっています。この盤も MP3の圧縮音源で良ければ全曲買えますが、グラモフォンはどうして再販しないのでしょう。近頃このレーベルを 離れ、さほどメジャーでないところに移籍したことと関係があるのでしょうか。それともマフィアと喧嘩でもしたの でしょうか(?) 表題付きでないハイドンの四重奏など、近頃の商売では採算が取れないのかもしれませんが。

 1992〜93年のデジタル録音は大変優れており、低音は たくさん出る方ではなくグラモフォンらしい特徴も出ているものの、高い方の弦の音がのびやか で、細かい音も拾っています。モダン楽器らしい艶が味わえます。



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       Haydn   String Quartets op.20 "Sun" Qurtets
       Quatuor Mosaiques

ハイドン / 弦楽四重奏曲集 op.20「太陽」
モザイク四重奏団
 作品20の凄さを分からせてくれた優れた演奏で す。さらっと優美に流してくれる方が良い曲もありますが、ここではシュトルム・ウント・ドランク期の作品の中でも特 にその個性が強いとされる作品20の感情表現を余すところなく堪能させてくれます。主に第二楽章でのハイドンの孤高 の境地をえぐり出してくれ、ラディカルな部分を隠し持つこの作曲家の真価に気づかせてくれました。二曲目(32番) の第二 楽章、三曲目 (33番)の第三楽章、四曲目(34番)の第二楽章など、絶品です。ひたむきで熱のこもったところが優雅なピリオド奏法の表情と合わさった名演だと思いま す。

 録音はひばりのときのセッションのように反響が付き過ぎるということはなく、大変良いです。若干オンマイクなの か、中高域に強さがあってややモダン楽器寄りの音に聞こえなくもありませんが、ロンドン・ハイドン四重奏団との比較 でそう感じるのであり、これ自体は心地の良い録音だと言えるでしょう。ツイーターの異なったスピーカーでは印象が若 干変わりますので、再生機器によって違いは出ると思います。



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      Haydn   String Quartets op.20 "Sun" Qurtets
      London Haydn Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲集 op.20「太陽」
ロンドン・ハイドン四重奏団
 ピリオド奏法で気に入った演奏はモザイク四重奏団 ぐらいかと思っていたら、新しいのが出てきました。2010年録音のイギリスの四重奏団です。ハイドンに特化したと いうことで、これが大変良かったです。モザイク四重奏団の張りつめたところのある演奏も素晴らしいですが、こちらは もう少しリラックスしていながら、ハイドンの革新的な作品だと言えるこの作品20の静かな楽章での深みもしっかり感 じられる、非常にレベルの高い演奏です。4番(第34番)の第二楽 章など、大きな呼吸があって感情に訴えてきます。ピリオド奏法独特の揺れ歌うような抑揚はモザイ ク四重奏団よりあるように感じますが、それも自然なものです。テンポは若干遅めで、味わいつつ進めるという感じで す。さあ、モザイクとどちらが好みなのか迷うところとなってきました。作品17ではさほどに思わなかったのですが、 20では穏やかな心地良さに魅了され、大分このロンドン・ハイドン四重奏団の側に傾いてきています。ひとことで言っ て、芳醇です。
 
 録音がまた大変優れています。繊細でやわらかさもあり、ピリオド楽器の理想的な音です。細かい音もよく拾っていま すが、潤いがあってうるさくなりません。作品17の方での、ややメタリックに傾くときもある輪郭のはっきりした録音 よりもこちらの方がバランスが良いと思います。



作品17のセット

 正直なところ、「ひばり」と「十字架 上の七つの言葉」を別にすれば、聞いていて最もきれいだと思うのが op.17の作品集6曲です。したがって最もよくCDをかけます。張り詰めた空気のある 疾風怒濤期ということで、作品20と並んで印象的な短調の部分も聞けます。一曲目(第25 番)の第三楽章の出だしなど、ちょっとモーツァルトの四重奏の短調を思わせるところもあります。作品20の方が 技術的に進んでおり、楽曲としての芸術的価値は高いのかもしれません。確かにいくつかの楽章は聞いたときに深み を感じさせる点でも作品17を凌駕しているようにも思います。しかしソナタ形式の主題とその回帰の仕方がより完成さ れているというようなことは、仮にそうだったにせよ正直私にはよく分かりませんし、ど うでもいいことです。また、作品20以降でヴァイオリン主導の構成を脱し、四人が平等に語り合う新時代の 技法が確立した、などとも良く言われます。そうなると、その前の作品17は価値がないように聞こえますが、関係 ありません。優美なハーモニーが味わえ、第二楽章以外でもトータルで流れを楽しめるとい う点で、聞いて心地良いのは断然この作品17なのです。3番 あたりからかけると頭の楽章からそよ風の爽やかさがあり、次々と美しい旋律が何曲分も連続します。
 結局シュトル ム・ウント・ドランクという区分自体も、たいした意味はないような気がします。元々実体のないものに こっちの都合で勝手な形を当てはめただけのものが我々の認識パターンなのですから、名前の通りの特徴があるなど と信じるのはおまじないの類いでしょう。そんなことよりとにかくもっと注目してほしい作品17、ハイドン39歳 頃の作品 です。ひとことで言えば、幸せになれる音楽です。有名でないせいで、この曲集だけ単独でCDが出 にくいのが大変残念です。



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       Haydn   String Quartets op.17
       Angeles String Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲集 op.17
エンジェルス四重奏団
 いささか大げさですが、ハイドンの四重奏の中で最高 の曲と演奏だと思います。全集の中の二枚で、バラで作品17だけが出ているわけではありません が、価格がこなれているので問題はないでしょう。変に力を入れず、滑らかに軽やかに流れて行くところが 素晴らしく、なぜかこの作品17に限ってはピリオド・アプローチの強弱がないのが魅力的に感じられま す。次の作品20ではピリオド奏法で行くモザイク四重奏団やロンドン・ハイドン四重奏団の方が濃い陰影 があって印象深く、このエンジェル スよりも断然好きなのですが、ここではどうも逆転したかのような印 象があります。おかしいなと思って同じ作品17も録音しているロンドン・ハイドン四 重奏団と再度聞き比べてみても、エンジェルス四重奏団の演奏には他のどんな盤にもない良さがあるようで す。曲の性質なのか、それともたまたまの演奏の出来具合なのでしょうか。ずいぶん速めのテンポで行く部分もありますが、ビブラートもないので 純粋に聞こえます。
 盤の収録の仕方で1番2番が前の op.9と一緒になり、3番から最後までが一枚になっているので、つい3番から聞いてしまうのですが、その盤(CD6)は箱から出して別のジュエルケースにでも入 れておきたいぐらいです。

 録音がまた見事です。フィリップスのもの(写真を掲げた新しい廉価版の方はデッカ・ レーベルとし て出ています)ですので当然かもしれませんが、ナチュラルで繊細、滑らかで最上質な弦の音です。残響はややある方ですが、ひばりのところで感じた定位の微 妙さと反響過多の問題はここでは全くありません。私はハードディスクから再生すること をメインにはして ないので、もし作品17だけ二枚組で出たら重複覚悟で買ってしまいそうです。ハイドンの最上の音楽です。そしてなんとも幸せな音楽です。



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       Haydn   String Quartets op.17
       London Haydn Quartet

ハイドン / 弦楽四重奏曲集 op.17
ロンドン・ハイドン四重奏団
 ピリオド楽器とアプローチによる演奏 です。作品17だけバラで買える数少ないものの 一つでもあります。上のエンジェルス四重奏団のところで比較して良いことを言いませんでしたが、バロック・ヴァイオリンの音で聞けるのはやはりありがたい ことです。滑らかに流れて行くモダンの演奏とは方法論が違うので、比較するものではないのでしょう。ゆったり と、フレーズの区切りごとに一歩ずつ噛み締めて行くような進み方には別の良さがあります。光の当たり方で全く別 物に見える現象と言いましょうか。ブッフベルガー とフェ ステティチも出ていますが、古楽器系では個人的にはこれがいいように思います。大きめな起伏があり、ピリオド奏法独特の呼吸が聞かれます。テンポはエン ジェルスよりもやや遅めでしっかり抑揚が付きます。作品20で見せたリラックスした演奏と基本は同じでありなが ら、音の問題もあるのかもう少しシャープなところが前に出ているような気もします。エンジェルスが部分を強調せずにさらっと行くので相対的にそう感じるのかもしれません。私は必ずしもそうは思いませんが、人によっては 鋭い表現と言うこともあるようです。意識の高い、良い意味でテンションのある演奏です
 ハイドンの能天気さが得意でなく、全集を買うのもどうかと思っている人には、ぜひともこれだけでも聞 いてみて欲しいと思う二枚組です。濃密な至福の時が訪れます。通しで聞いてどの瞬間も魅力的というのは、どの作曲家においてもあま りないことではないでしょうか。ましてやハイドンが?  

 2008年の録音は新しいだけあって優秀です。やや高域のエッジが立った音ですが、ボリュー ムを下げて聞く分にはこの方がきれいに聞こえるかもしれません。バランス的には低音も出ています。同じ団体の作品20の方はナチュラルで繊細にハイが延び、やわらかさ もあってトータルで素晴らしい音なのですが、それなりの装置でしかるべき音量で聞かないとただおとなし く聞こえてしまう可能性もあります。17の方は音が大きいとややキツく感じるときもあり、色鮮やかでコ ントラストの強いきれいな写真を見ているような印象です。

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 ハイドンの四重奏について、アマチュアの観点から述べさせていただきました。これ以外 にも実にたくさんの演奏があり、ハイドン好きの人にとっては巨大迷路に歩いて入るような楽しみだろうと 思います。私よりずっと詳しい人が色々レポートしてくださっていますからここで取り上げる必要もなかっ たのでしょうが、一人の人が色々な演奏を同じ曲で比較してくれれば無駄にCDも買 わなくて済むのにと常々思ってきたものですから、偏ってしまうこと覚悟で取り上げてみました。
 結局今のところよくかけているのは、ハーゲン四重奏団のひばり、モザイク四重奏団の十字架上の 七つの言葉、ロンドン・ハイドン四重奏団の作品20、エンジェルス四重奏団とたまにロンドン・ハイドン四重奏団の作品17といったところで ほとんどという感じになっています。最初からこれらだけ手に入ってたら効率的だったのですが、そうでな いから楽しいのでしょう。新たな発見があったらまた書き加えさせていただきます。



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