クラシックの入門曲をご案内 クラシック音楽に馴染みのない人が最初に聞いてみるとよいクラシックの入門曲にはどんなものがあるのでしょう。何曲かそう呼ばれていそうなものは思い浮かぶにせよ、輪郭がはっきりしない場合はまず、その反対を考えてみるとよいかもしれません。
もうすでに馴染みのない人という前提を踏み外して知ってる人向きの話題になってしまいますが、そこから入門する人が少なそうな通好みで難しい曲の代表と言えば… バッハのフーガの技法やブクステフーデのオルガン曲、ベートーヴェンの後期やバルトーク、ショスタコーヴィチあたりの弦楽四重奏曲とかでしょうか。さすがにフーガの技法からクラシックに入る人は少なそうです。でもベートーヴェンの感謝の歌(弦楽四重奏曲第15番の第3楽章)などは初めて聞いて惹き込まれる人がいても不思議じゃありません。これら「難しい」とされる曲たちは、技法的な意義が高いと言われている作品です。
また、響きの観点から行くならば、五度音程の中世の宗教曲などは皆同じように聞こえて馴染み難いかもしれません。無調の考えが出て来た以降の現代音楽もでしょう。現代音楽の響きを受け付けない人は多いはずです。
アンケートのランキングで不人気な曲とかマイナーな作曲家となると、歌曲とピアノ曲を除いたシューマンはマイナーでしょう。メンデルスゾーンもヴァイオリン協奏曲を除けばあまり人気じゃないみたい。ヘンデルには有名な入門曲があるし旋律名人なので意外にせよ、世渡り上手のハイドン、超絶技巧のリストとともに忘れられがちのようです。日本の評論家の大御所、吉田秀和氏が好きだったフォーレのピアノ四重奏や五重奏はどうでしょう。あるいは20世紀半ばまで脚光を浴びなかった民族音素派のヤナーチェクの作品とか。長過ぎるし嫌われることがあるブルックナー、マーラーには一方で根強いファンもいます。好き嫌いがはっきり分かれるという意味ではワーグナーもです。
以上に共通している傾向は、すぐに耳に馴染むメロディーが見つけ難いということでしょうか。でも人の感性は様々だし、感覚の優れた人たちは意外なものにピンと来たりします。何と言ってもピンと来ることが大事なのですから、「クラシックの入門曲」という考え自体がナンセンスです。バイエルやブルグミュラー、ツェルニーといった練習曲の類を除けば、「入門」用に作られた曲というもの自体が本来存在しないのです。それでも挙げることに意義があるならば、まず親しみやすいメロディーがあって、恐らくは編成の小さいものではなくて華やかなオーケストラ作品が中心となり、ポップスで言う「一発屋」のように、それを作った作曲家の中でもそれだけが突出して人々に喜ばれていたりするもの、というケースが多くなると思います。形式的には序曲や組曲、交響詩だったりと色々ながら、短かければ CD一枚を余らせてしまう曲も多く、かといって関連曲をカップリングさせても、結局それだけにしか耳が行かなかったりします。
では、以下にクラシックの入門曲として親しみやすい作品を挙げてみます。
思いつくままです。曲の解説と CD については項目をクリックしてください:
モーツァルト/アイネ・クライネ・ナハトムジーク
ワーグナー/タンホイザー・マイスタージンガー序曲 ワーグナー/ワルキューレの騎行
スメタナ/「モルダウ」 ヨハン・シュトラウス2世/美しく青きドナウ ボロディン/中央アジアの平原にて/「ダッタン人の踊り」 ブラームス/ハンガリー舞曲 チャイコフスキー/序曲1812年 チャイコフスキー/弦楽セレナード
ドヴォルザーク/スラブ舞曲 マスネ/「タイスの瞑想曲」
グリーグ /ペールギュント組曲 リムスキー・コルサコフ/シェヘラザード エルガー/「ニムロッド」 マーラー/交響曲第5番「アダージョ」 リヒャルト・シュトラウス/ツァラトゥストラかく語りき ガーシュウィン/パリのアメリカ人
ロドリーゴ/アランフェス協奏曲 バーバー/弦楽のためのアダージョ 19世紀のロマン派時代のものが多くなるのは大編成のオーケストラ作品がその時代以降に作られたからです。それ以前のより小編成なものも含めてもっと一般的な交響曲や協奏曲といったカテゴリーまで広げると: 一般的な交響曲、協奏曲などから モーツァルト/ 交響曲第40番
ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」 シューベルト/交響曲第8(7)番「未完成」 ベルリオーズ/幻想交響曲 チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」 ドヴォルザーク/交響曲第8番「イギリス」 バロック時代から
パッヘルベル/「パッヘルベルのカノン」 アルビノーニ(ジャゾット)/「アルビノーニのアダージョ」 マルチェッロ/「ヴェニスの愛」 ヴィヴァルディ/合奏協奏曲「四季」 バッハ/ブランデンブルク協奏曲 バッハ/管弦楽組曲第2番/第3番〜「G線上のアリア」 ヘンデル/水上の音楽 ヘンデル/ハープ協奏曲 ピアノや室内楽の小品
ベートーヴェン/「エリーゼのために」
バダジェフスカ/「乙女の祈り」
オペラ・アリア 他
何を含めるか、外すかは人によって違います。 他に室内楽分野でも、例えばモーツァルトのフルート四重奏曲のような親しみやすいメロディーを持った作品はいくつもあります。管弦楽作品に限っても上に列挙したもので全てではありません。
注1:現代曲の始まりに当たり、一部で入門曲に数えられることがある程度です。不協和音が多く、リズムが面白 い曲なので、クラシック以外のビートの効いた音楽に馴染んでいる人には面白いかもしれません。
2:1と同じ作曲家のオーケストラ作品で、1よりメロディアスで聞きやすい曲です。一般的には入門曲に数え られることは多くはないかもしれません。
3:これも20世紀の作品ですが、現代音楽の特徴はなく、リズムの面白さ、ユーモラスさ、合唱も含む大きな 編成ということで含めました。
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