ブラームス / ピアノ協奏曲第2番
ブラームスのヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲 2

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 ブラームスのヴァイオリンとピアノの協奏曲を扱う記事の続きです(ヴァイオリン協奏曲はこちら)。ヴァイオリン協奏曲とピアノ協奏曲の第2番はどちらもブラームスがイタリア旅行から 帰った1878年の作であり、ヴェルター湖畔の村ペルチャッハで着手され、イタリアの明るい日差しを思わせるようなところがあるのが似ていると述べました。そして2番のピアノ協奏曲の方が完成されたの二度目のイタリア旅行から帰った後の1881年になりました。成熟期・黄金期とされますが、悲観的になる晩年とは違い、自作をあまのじゃくに評するなど、気持ちの上でも余裕のある時期であるように感じます。この作曲家を代用する傑作の一つです。

 出だしのホルンの深々とした響き、ときどきシューベルトのザ・グレイトと混同したりするのですが、魅惑的です。第三楽章のチェロの静けさもブラームスの美点のすべてが表れていると言っていいのではないでしょうか。協奏曲としてはめずらしく四楽章構成で、緩徐楽章が三番目に来ており、第二楽章はスケルツォになっています。本人が初演しましたが、技巧的に難しいことでも知られています。



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      Brahms Piano Concerto No.2 in B♭ major op.83
      Alfred Brendel (pf)   Bernard Haitink    Royal Concertgebouw Orchestra, Amsterdam '73

ブラームス / ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 op.83
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
ベルナルト・ハイティンク アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 アルフレッド・ブレンデルの演奏が、そのメンタリティがブラームスにぴったりということもあって素晴らしいと感じます。内向的でやや夢見るような目線で、ちょっと自意識過剰なロマンティシズムを表す人ながら、ここ では大変しっとりとしています。73年フィリップスのアナログ録音はみずみずしくて優れています。自然ながら独特の艶のあるピアノは当時のフィリップス録音に共通しており、他に様々な演奏者の録音がある中でも魅力的だと思います。交響曲的とも言われるこの曲、オーケストラの方はハイティンクがアムステル ダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮していますが、過剰な自己主張がなく、良い意味でオーソドックスです。交響曲の演奏では案外さらっと流して行っていわゆる中庸さを感じさせることもありましたが、ここではゆったりとして細部までよく見えます。響きも自然に録音されています。



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      Brahms Piano Concerto No.2 in B♭ major op.83
      Alfred Brendel (pf)   Claudio Abbado    Berliner Philharmoniker '91

ブラームス / ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 op.83
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
クラウディオ・アバド / ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 一方、新しい方の録音では、歌わせる部分で遅めに傾きがちなアバドの伴奏も関係してか、ブレンデルもゆっくりのところをより噛みくだくように演奏しています。その結果急の部分との対比でよりスケールが大きく聞こえる ようです。よく比較すると旧盤もたっぷりとしたテンポで歌わせているのは同じなのですが、新盤の方がややコントラストが強くてエネルギッシュに感じます。 表現としてはどちらの盤もピアノに関しては大きく違うものではありません。ブレンデルは彼らしく一貫してしていると言えるでしょう。第三楽章のチェロはベルリン・フィルの主席奏者であるゲオルク・ファウストだと記されています。大変魅力的なチェロです。91年のデジタル録音は旧盤よりやや弦の高域が華やかで、ピアノの艶は逆に控え目です。これはデジタルとアナログの違いもあると思います。特にフォルテになったときの響きに録音方式の性質が表れているようです。
 まとめて言えば、落ち着いた間合いと自然な録音では旧盤、より振り幅が大きくて分かりやすいのは新盤ということになるでしょうか。個人的には旧盤がいいけれども、どちらも良い演奏だと思います。



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